今日は卒業式である。
今朝の稲葉地公園。雨上がりのせいか、しっとりしている。
卒業式のリハーサル。気がつけば快晴。卒業式らしいよい天気になった。感謝。
10時30分、開式。
卒業式「学長のことば」(名古屋音楽大学平成22年度卒業証書・学位記授与式/2011年3月22日)
「音楽学部ご卒業、並びに大学院修了おめでとうございます。
卒業生、修了生の保護者の皆さま。本日はまことにおめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。卒業生、修了生はこうしてみな立派に育ちました。今日の晴れ姿をぜひ目に焼き付けていただきたいと存じます。
卒業生ならびに修了生の皆さんには、今日の卒業式を機に、ご家族をはじめ、お世話になった多くの方々に対して感謝の念を新たにしていただきたいと思います。
音楽学部卒業生の皆さんは、音楽学部の全課程を終了いたしました。本学の学部卒業生には学士(音楽)の学位が与えられます。学部卒業生の中には大学院に進学し更なる研鑽を積む者もおりますが、そもそも学士という学位の意味は、社会に通用する力を身につけたということを大学として認定することにあります。学士としての力、すなわち社会で生きていく力を身につけることに大学生活4年間のひとつの大きな意味があります。
皆さんは音楽大学を卒業しました。音楽学士ということの意味は、社会人としての基礎的な力を身につけたという証であると同時に、みなさんが音楽の専門課程を修了したという証です。すなわち、音楽の専門家を養成するための高等教育課程を修了したということを意味します。また、大学院を修了し音楽修士の学位を取得したということは、さらにより高度な音楽の専門家としての認定を受けたことを意味します。
みなさんはこれから音楽の専門家として社会に出て行きます。音楽を職業とするか否かにかかわらず、皆さんは名古屋音楽大学の学士課程もしくは修士課程を卒業した音楽の専門人です。社会の中でさまざまな面において、これから音楽の専門人、音楽という専門的能力をもった職業人としての役割が期待されることでしょう。
皆さんが学んだ同朋学園、そしてこれを設置母体とする名古屋音楽大学は、親鸞聖人の同朋和敬の精神を建学の理念としています。
日本のすべての大学は、教育基本法と学校教育法に基づいて設置されていますが、それに加えて本学においては、親鸞聖人の同朋和敬の精神により真理を探究すること、創造の精神を高揚してまことの人間知性を開発すること、音楽に対する洗練された感覚と洞察の眼を持って未来を指向する芸術性ゆたかな人材に育つことが期待されています。
私はこの建学の精神を、「響きあう身体、響きあう心、響きあう命」をもった人間の育成と表現しています。
さて、本学の教職員は日々、そうした人材を育成すべく、音楽と学生に対する深い愛情を持って、レッスンや授業をはじめとする大学業務に専念しております。ここで、教職員の皆さんにもあらためてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。そして今後とも後進の育成に誠心誠意ご尽力くださいますようよろしくお願いいたします。
卒業生ならびに修了生の皆さん、社会に出てからも本学で学んだ建学の精神を忘れずに、社会に貢献できる音楽の専門人として活躍されることを期待しております。
さて、言うまでも無いことですが、この世の中に完璧な人間はいません。だれしもが欠点をもっています。社会で生きていくうえで、欠点の克服はもちろん大切です。しかし、それにも増して大切なのは強みを生かすことです。自分の強みを生かして、他者との競争に勝って自分だけ良い思いをせよといっているのではありません。
自分の強みを最大限に生かすことで、社会の弱みを補い、他者の欠点を補う。そうすることで人間の社会はよりよいものとなります。皆が強みを活かしあうことで、お互いの欠点を補填しあい、弱みをカバーしあうことができます。それこそがよりよい人間の文化だと思います。
皆さんは自分自身の強みを自覚していますか。これから社会人として生きていくうえで、自分の強みを少なくとも5つは認識しておくとよいと思います。
さて、私は、名音大の強みとして5つあげています。
第一に、ハーモニーの力、調和する力です。
第二に、アンサンブルする力、共感する力です。
ハーモニーとアンサンブル、似たような言葉ですが、ハーモニーは響きあい、アンサンブルはまとまりを意味します。
ハーモニーとは、ギリシャ神話のハルモニアに由来する言葉で、ギリシャ語で「一致」や「連結」を意味します。一般的な用語としては、物事の調和、人と人との調和などを意味する言葉です。
音楽用語では、和声を意味します。和声とは、和音よりは少し広い意味をもつ言葉で、和音の進行や各声部の配置や進行の組み合わせ、すなわち和音の時間的な連続を意味します。時間的な流れをもった複数の音の響きあいとでもいいましょうか。複数の音たちが響きあい、その響きあいが時間の流れの中で一致したり連結したりしながら、自由に、だが調和して展開していくイメージです。
アンサンブルとは、フランス語で、「一緒に」という副詞、または「一揃い、全体」という名詞です。音楽用語では、2人以上が同時に演奏すること。合奏、重奏、合唱、重唱、あるいはそれらの団体、合奏団、合唱団などを意味します。数学用語では、集合です。服飾用語では、洋服の「組み合わせ」を意味します。一般的に「まとまり」を意味する言葉です。
ハーモニーとアンサンブル。響きあいとまとまり。どちらも大切な要素です。音楽にとって大切な要素であると同時に、人間社会にとって大切な要素です。響きあいの無いまとまりは決して楽しい状態ではないでしょうし、まとまりのない響きあいもおそらく幸せな状態ではないでしょう。
ハーモニーとアンサンブル。一つだけ共通点があります。どちらも単独では成り立たない、他者を必要とするという点です。単独の音では、ハーモニーは成り立ちません。他者がいなければアンサンブルは成り立ちません。ソロ演奏もある意味で聴衆とのアンサンブルだと言えます。アンサンブルの中で美しいハーモニーを奏でるには、それぞれのパートがそれぞれの役割を果たすことが不可欠です。音楽においても社会においても、あらゆるアンサンブルにとって、不協和の解決ということは永続的な課題です。そして、それはとても意味があるやりがいのある課題です。
「音と人とのアンサンブルがある」というキャッチコピーがあります。これは、名古屋音楽大学もひとつのアンサンブル、まとまりだということを意味しています。みなさんはこの4年間ないし6年間を、名古屋音楽大学というアンサンブルの中で生きました。どのような人との出会いがあったでしょうか、どのような音との出合いがあったでしょうか。素晴らしい人と音楽と出合えたでしょうか。素晴らしいハーモニーを奏でることはできたでしょうか。時には不協和音もあったことでしょう。しかしそれらはすべてかけがえのない大切な出会いだったと信じます。名古屋音楽大学というアンサンブルをこれからも大切にして生きてほしいと思います。
さて、ハーモニーとアンサンブルに加え、名音大の強みとして私はさらに、次の三つをあげています。
第三に、日々練習し鍛錬し、学習する力。学習意欲です。
第四に、達成する意欲、達成する歓びを感じる力。達成欲です。
第五に、前向きに努力する心。ポジティブ志向です。
私は、これらはすべて名音の学生たちに共通して見られる強みだと思っています。
卒業される皆さん、ぜひ、自分の個性の強みを発見し、活かしてほしいと思います。音楽と社会に向き合っていく力にしてほしいと思います。社会からの期待に応える音楽文化の創造と地域社会の形成に貢献してほしいと思います。厳しい世の中です。ハーモニーの心とアンサンブルの大切さ、アンサンブルする他者のかけがえのなさをぜひ心に刻み、日々鍛錬し、達成する歓びを糧にし、前向きにポジティブにこれからの荒波に立ち向かっていってほしいと思います。響きあう心と命を大切に、しなやかに、そして強くたくましく生きてください。
卒業ならびに大学院修了、おめでとう。」
卒業式は滞りなく終了。
引き続き、記念撮影が行われた。
13時から、卒業を讃え門出を祝う「フェアウェルパーティ」が催される。
学長挨拶の後、学部長による乾杯。乾杯はソフトドリンクである。
パーティでは、卒業生、在学生が入り混じっての演奏が繰り広げられる。
楽しいひと時はあっという間に過ぎ行く。
卒業生たちの活躍を期待する。
ブログランキングに参加しています♪ 毎日のワンツークリックにご協力ください。